研究概要 |
本研究は(1)今日、大部分の動物種胚の凍結保存が可能であるが、ブタ胚のみはいまだに成功例がないのでその可能性をさぐる、(2)従来行われてきた凍結完了に2〜3時間を要する緩慢凍結法にかわって、短時間に凍結できる急速凍結法を確立することを目的としている。卵核胞期のブタ卵胞卵を0.5℃/分の速度で0,10,20,および30℃(対照)に冷却したときの生存率はそれぞれ0,0,16〜21および46〜52%であった。この場合、卵にショ糖,グリセリンなどを添加しても生存性の維持に効果は認められなかった。これらの成績から、卵核胞期のブタ卵胞卵は0〜10℃の温度に冷却すると生存できないと思われる。今後、卵にブタ卵子の膜の構成成分を添加したり、胚とくに桑実胚と胚盤胞を用いることなどによって、ブタ卵子の液体保存や凍結保存が可能になるのではないかと思う。マウス胚を、-20〜-40℃のアルコールバスか-79℃の粉末ドライアイス中に投入し、一定時間後に液体窒素へ浸漬するか、胚を-170℃〜180℃の液体窒素ガス層内に移し10〜15分後に液体窒素へ浸漬して、急速凍結下で胚の生存性を維持するための諸条件について検討した。 液体窒素ガス簡易急速凍結法における最適条件は、保護物質は2Mグリセリン、0℃における2Mグリセリンの平衡時間は5〜30分間、ガス層内での静置時間は3〜60分間、融解法は急速融解,凍結・融解胚からのグリセリン除去にはショ糖液を使用、胚の発生ステージは桑実胚と胚盤胞であった。この急速凍結法によって、緩慢凍結法に近い比較的高い生存性がえられた。液体窒素ガス簡易急速凍結法には(1)凍結・融解胚の生存性が比較的高い、(2)凍結操作が簡単で多量のサンプルを凍結できる、(3)高価な胚凍結器を必要とせず液体窒素保管器を使用して凍結できるなどの長所がある。したがってこの凍結法はマウス以外の動物種胚の凍結に応用できるものと思われる。
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