Research Abstract |
痛みなどの侵害性情報は,小型後根神経節(DRG)細胞に発現する複数種の電位依存性Naチャネルサブタイプが起こす活動電位によって伝搬される.小型DRG細胞のうち,C線維をもつ細胞はさらに,糖蛋白であるisolectinB4(IB4)で認識される群(IB4陽性細胞)とされない群(IB4陰性細胞)とに分類される.これらは,それぞれ異なる種類の痛みの伝搬に関与しており,Naチャネルの発現も異なっている可能性が考えられる. そこで,野生型(WT)マウスと,痛みとの関連が指摘されているサブタイプであるNaV1.8を欠失したNaV1.8ノックアウト(KO)マウスからDRG細胞を単離し,IB4による生体染色を行い,IB4陽性細胞と陰性細胞を同定した.そして,ホールセルパッチクランプ法を用いて,各タイプの細胞に発現するNaチャネルの電気生理学的性質を解析し,活動電位の発生に果たす役割について検討した. その結果,WTマウスのIB4陽性細胞,陰性細胞共に,静止膜電位付近ではNaV1.8によるTTX-R/slow Na電流が活動電位の主体となっていることが示された.しかし,膜電位が過分極側になると,IB4陰性細胞でのみ,TTX感受性サブタイプによるTTX-S/fast Na電流が活動電位の一部を形成していた.このような違いが,それぞれの細胞群が異なる痛みの伝搬に関与していることと関連している可能牲が考えられた. 一方,NaV1.8 KOマウスのDRG細胞においては,IB4陽性細胞,陰性細胞共に,NaV1.8の欠失により,静止膜電位付近で主体となるNa電流がTTX-S/fast Na電流にスイッチし,代償的に働いている可能性が示唆された.さらに,IB4陽性細胞ではNaV1.9によるTTX-R/persistent Na電流のアップレギュレートが見られ,このサブタイプもNaV1.8を代償している可能性が考えられた.
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