プラスチック歯車を熱間転造仕上げしたときに被加工歯車歯面に形成される素材プラスチックの溶融層は非ニュートン流体である。現有の自由表面を持つ流体の解析プログラムはニュートン流体のみを扱うものであったが、近似的に溶融層をニュートン流体として計算を行ったところ、非常に小さなレイノルズ数の流れとなるため計算が難しいことが分かった。そこでこれまでオイラー座標系を用いて差分近似用の格子を作成していたものをラグランジュ座標系を用いて行ったところある程度計算が進むことが分かった。すなわち、自由表面の形状変化に合せて格子を逐次変化させる方法である。この方法により歯面溶融層流れの解析を行ったところ、プラスチック歯車を熱間転造仕上げしたときに正面の歯形に生じていた圧力角誤差発生の様子を定性的にではあるが再現できるようになった。したがって、今後この方式を非ニュートン流体の流れに発展させれば、プラスチック歯車の熱間転造仕上げのシミュレーションプログラム開発が可能になるものと期待できることが明らかになった。 一方、比較検討用に行ってきた実際の転造仕上げ加工実験から、被動側歯面と従動側歯面ですべり方向が異なるため、全く別の溶融層流れが起こり、結果として異なる方向の圧力角誤差が生じていたが、反転工程を加えることにより対処できることが明らかになった。さらに、軸方向の歯面すべりがないため、熱間転造仕上げによる歯すじ形状の修正がほとんどできていなかったが、軸方向送りを与えることによりそれを可能にした。
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