研究課題/領域番号 |
16730057
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
民事法学
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
山田 泰弘 立命館大学, 法学部, 助教授 (00325979)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2006
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研究課題ステータス |
完了 (2006年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
2006年度: 400千円 (直接経費: 400千円)
2005年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2004年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | 役員等の第三者責任 / 役員等の会社に対する責任 / 株主代表訴訟 / カナダ / 監査役 / 退任取締役 / 取締役の第三者責任 / 投資取引 / 説明義務 / 株式交換 / 株式移転 / 企業再編対価の柔軟化 / 原告適格 / 株主の救済 / oppression remedies |
研究概要 |
本研究は、経営者責任追及制度が会社法制上どのような役割を果たすか、カナダ法と比較することで検討するものである。日本では、経営者責任追及制度は、役員等の第三者責任(会社法429条)と役員等の会社に対する責任(会社法427条)とに関するものが存在する。他方、カナダ法にあっては、「証券」の保持者であれば利用可能なOppression RemediesとDerivative Suitsとが存在する。本研究は、日本法が変動期であったこともあって、日本法の検証に重点をシフトした。 役員等の第三者責任は、従来、十分な資本力のない中小企業が破綻した場合に、会社の債権者が、支配株主でもある取締役に対して回収できなかった債権額分を損害として賠償させ、債権者を保護する役割を果たしてきた。中小企業では、資本金額が相対的に低く(平成2年商法改正で、最低資本金制度が導入されたが、当初予定されたハードルより低く、さらに会社法では最低資本金制度が廃止された)、財務状況が開示されていない。この環境下では、役員等の第三者責任の果たす役割は正当化され得るかもしれない。しかしこれは、損害賠償の要件である「職務を行うについて悪意又は重大な過失」という要件や損害と役員等の行為の間の因果関係の希薄化を招きかねない。この点については、投資取引に関する従業員の説明義務違反に関する責任を中心に「投資取引における従業員の不当勧誘に対する取締役の責任」立命館法学299号513頁(2005年)で分析した。 役員等の会社に対する責任は、役員の義務違反行為の発生を抑止する機能(抑止機能)とそれによる損害を填補する損害填補機能とが存在する。「代表訴訟と役員の責任(仮題)」浅木慎一ほか編『検証・会社法改正(仮題)』(信山社,2007年11月刊行予定。原稿提出済)は、立法の展開を追い、当初、損害填補機能を重視してGHQにより整備された役員等の会社に対する責任制度が、株式持ち合いを背景とする、経営者の行動の健全確保の制度の機能不全を打破するために、抑止機能が重視されるようになった状況とそれによる影響を分析している。抑止機能を強化する立法のコンテクストから結合企業関係においてもその効果を確保すべきであると、「企業再編対価の柔軟化と株主代表訴訟」立命館法学296号90頁(2004年)で分析した。 以上の日本法における制度運用を見た場合、日本における特殊事情(資本力の乏しい中小企業対策、株式持合対策)が法整備に大きな影響を与えたことがわかる。他方、カナダ法においては、取締役の責任制度はむしろ破産処理・会社更生との関係で利用されている。このため、Oppression RemediesとDerivative Suitsとの使い分けを分析する前提として(研究の結果それ自体は複雑なものではない)、類似の法制度の利用方法を両者が違えた理由の分析が必要でとなることがわかり、次なる研究のステップ・対象が明確化したと考える。
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