研究概要 |
我々は好中球寿命の制御に及ぼすマクロライドの影響についての検討に加え,昨年からはマクロライドの作用機序に関して,コルチコステロイドとの作用の相違点・類似点に着目して新たな検討を加えている.以前我々は,好中球アポトーシスに及ぼすマクロライドの直接的効果をコルチコステロイドのそれと比較した.その結果は,マクロライドが好中球アポトーシスに有意な影響を及ぼさなかったのに対して,コルチコステロイドはそれを抑制する,すなわち好中球寿命延長の直接的効果を有するというものであった.さらに我々は,気道上皮細胞からのLipopolysaccharide-binding protein(LBP)産生についても,コルチコステロイドとの比較という観点から検討を加えた.LBPは最近,ヒトの2型肺胞上皮細胞からも産生されることが示され,エンドトキシンに対する肺局所での防御への関与が推測されている蛋白である.DPBなどの慢性気道炎症において,細菌の下気道への定着はしばしば遭遇する現象である.これは細菌に対する局所での防御機能の低下を示唆するものであり,おそらくLBP産生の制御不全が生じていることが予想される.コルチコステロイドはLBP産生を誘導する作用を有する.我々の検討では,クラリスロマイシンは単独では効果を認めなかったものの,A549細胞からのコルチコステロイド誘導性LBP産生を有意に増強した.このLBP発現増強はmRNAレベルでも認められた.またIn vivoマウスモデルにおいて,クラリスロマイシンの投与はアルブミン濃度に影響を及ぼすことなくBALFと血清中のLBP濃度を上昇させた.LPSの経鼻投与によりBALF中のLBP濃度と総細胞数は上昇したが,クラリスロマイシンはこれらを抑制した.以上のようにクラリスロマイシンはIn vivo, in vivoの両方においてLBP産生を促進した.これらよりLBPが細菌感染に対する宿主の肺局所での防御能増強に寄与する可能性が示唆された.
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