研究課題
基盤研究(B)
蓄熱密度が比較的大きい水和塩では、融点以下の温度にしても融液の状態を維持し、過冷却度(融点から保持している温度を差し引いた温度)を50K以上としても凝固しないといった著しい過冷却現象が生じる。このような材料を蓄熱材料として用いる場合には、過冷却解消(凝固開始)を何らかの方法でコントロールする必要がある。そのため、平成20年度は水和塩特有の著しい過冷却現象の解消を目的に、相図が良く知られている酢酸ナトリウム三水和物(融点58℃)を対象に、結晶核生成に対する超音波や電場等の外力場の影響を明らかにする目的で実験を行った。超音波印加効果に関する実験では、超音波印加素子を酢酸ナトリウム三水和物(濃度55%で満たされた試験管の底部に設置し、素子に印加する周波数を50Hz〜250kHzまで変化させた実験を行ったが、いずれの周波数においても核生成を確認することはできなかった。一方、電場印加効果に関する実験では、金属板を酢酸ナトリウム三水和物(濃度55%)で満たされた試験管の底部に設置し、この金属板と対向させて金属細線を設置し、印加する電圧を種々変化させた実験を行った結果、どのような過冷却度においても1.5V程度の印加電圧で核生成できることを確認した。そこで、昨年度の実験結果(上部から下部方向への結晶成長速度)と比較するため、電場による核生成を行って下部から上部方向への結晶成長速度を測定した。その結果、過冷却融液での下部から上部方向への結晶成長では、下部が高温のため融液内に対流が発生して結晶成長が抑制されるため、上部から下部方向への結晶成長速度と比較して遅くなる過冷却温度領域があることも明らかにした。これらの結果より、本研究の目的である水和塩(酢酸ナトリウム三水和物)を用いた場合の凝固プロセスのモデル化および温熱蓄熱システムの設計のための基礎データが得られたことになる。
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