研究課題/領域番号 |
20K02979
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09050:高等教育学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
兵藤 友博 立命館大学, 経営学部, 授業担当講師 (20278477)
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研究分担者 |
秋吉 恵 立命館大学, 共通教育推進機構, 教授 (00580680)
河井 亨 立命館大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (20706626)
中村 正 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (90217860)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 教養知 / 教養の哲学 / 大学生の知識 / 地域を基盤とした学習 / 双方向性講義 / 経験学習 / 認知と感情の再構成 / 科学者コミュニティ / 教養教育 / 教養知と専門知 / 実践知・臨床知・総合知 / 地域社会における知性 / セルフ・オーサーシップ / 21世紀社会と知性 / 社会的公正 / 教養文化史 / 地球市民 / 生活世界 / サービスラーニング / 学習者 / コロナ禍 / 大学教育 / 人間性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、総じて言えば、地球市民の形成、すなわち学生一人ひとりが市民社会を構成する人間として成長する、そのための教養教育とは何かを追求するものである。また、前述の三つの課題を基軸に、大綱化以降の教養教育として形成されてきた通時的な道筋、ないしは共時的な横断的な認識の広がりがどう組織化されてきたのか、「教養知」形成の仕組みのあり方を整理する。その上で、実のあるものにするために、研究者の個別的営為にとどまらず、研究課題を広く議論し追究する「教養知探求の研究運動」、すなわち「教養知」の探求に関 心をもつ他大学の研究者と連携し「開かれた研究ネットワークづくり」を志向する。
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研究実績の概要 |
3年度目を迎え、コロナ禍の科研プロジェクトの研究活動の限界性を踏まえつつ、本科研の課題「教養知の形成」に関して、対面での研究会場と遠隔リモートシステムを併用しての研究会を開催した。①「教養の哲学」を具体化する教養カリキュラム論、②「双方向性講義において学生自身が考える「場所」を付与することの重要性、③OECDコンピテンシーの議論を踏まえた「地域を基盤とした学習」における教養知、などの局面からの知見を深めることができた。 また、本科研の成果をまとめるため、本科研の研究会にこれまで専門知識の提供をしていただいた講師の方々と個別に協議すると共に、書籍出版企画書づくりを行い、「教養知の形成」の内容の内実化に向けた取り組みを行った。コロナ禍で関連学協会の年会等がリモート開催になる中で、この取り組みは、本科研が掲げる「教養知探求の研究運動」において研究者間をつなぐ媒体として活用されるものである。 個別的成果としては、①大学生の知識との関係での成長についての研究を広くレビューし知見を得た。②地域を基盤とした学習が学生に培う力について、教養知を育てる教育手法としての経験学習についての知見を得た。③要支援ニーズのある当事者向けの回復に関わる認知と感情の再構成において、自らを自由にするための思考と認知の枠の再構成(自己を相対化し俯瞰する視点の形成)が有効性をもっていることを確認し、その点にかかる知見を得た。④現代における科学的知見の探索・展開において、学術が産業、政府と交渉しつつも、科学者コミュニティが歴史的にどのような経緯をたどってきたのか、現代社会はときに容易ならない事態を迎えるが、どちらにしてもその形成いかんが問われてきたことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
達成状況は、これまでの初年度、二年度目、また上述の三年度目の「研究実績の概要」欄に示した通り、レビューをはじめ、個別的にも招聘講師の知見を含め、科研メンバーの各研究活動の視点から多面的にアップローチを行なうことで「教養知の形成」の全体像への接近、その把握に向かっている。すなわち、科研メンバーが所属する大学のみならず、招聘講師が所属する他大学の教養教育の実際、そこに見出される教養知の知見の新しさ、課題を把握し、全貌とはいえないまでも整理してきた。 しかしながら、コロナ禍の中で、通常の関係学会の年会での出張報告や、研究会とは別立ての他大学等の教養教育関係者との出張交流・ヒアリング、フォーラムの実施など、対面による研究会活動・訪問調査を実現するには至らなかった。もちろん資料・文献のレビュー、遠隔リモートシステムの利用によって努めてはいるが、率直に言って新たな実践、また知見の掘り起こしを行うには限界性があり、必ずしも満足するものになってはいない。事態を顧みれば、いかたしかたないことともいえる。いうならば、上述のようにリモートシステムによって、本科研の目標を達成することに努めてきたが、引き続くコロナ禍の関係上、ことに対外的には十全に進めるには困難性があった。 進捗状況として「やや遅れている」としたのは、上述に示した経緯、限界性ゆえのことを踏まえての評価である。本科研は科研費の残余を繰り越すことになったが、ここに指摘した課題を、本科研が掲げる「教養知探求の研究運動」を目指し、書籍刊行企画(後述)に取り組みで代替し実現したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は科研事業は4年度を迎えるが、繰り越して基金化された予算を活用して書籍出版企画を取りまとめ、広く研究成果を発信することとする。すなわち、本科研の「教養知探探求の研究運動」を展開するにあたって、これまでの科研の教養教育研究会で研究話題を提供していただいた研究者の報告内容を書籍出版企画(単行本)として総合的にまとめる。そして、本科研が目指す「研究運動」の媒体としてこれを活用する。 本科研の当初のこの部面での構想は、通常の対面での学協会の年会などでの面識のない研究者を含め、広く話題を議論、交流等を深めようと考えていた。しかし、そうした活動をいまだ許す情況には至ってはいない。 そこで、こうした書籍刊行企画の実現を掲げ、これをまとめるにあたって編集研究調整会議を随時開催し集団的に取り組む活動を行うことで、当初の本科研の構想に合致させることができるのではないかと考えている。この刊行企画の取り組みは本科研の当初の趣旨・目標を社会化する、代替するものともいえるが、日本の高等教育における教養知形成の議論・探求に一石を投じるものになるのではないかと位置づけ、これを4年度目の推進方策とする。 本科研のメンバーについては、これまでの3年間で培ってきた視点を踏まえて基本的に取り組むこととし、そして、専門知識の提供で招聘講師として参加された研究者の方については、前記編集研究調整会議で協議しつつ、あわせて教養知の知見を集約していく。
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