研究課題/領域番号 |
21K08561
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54040:代謝および内分泌学関連
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
片岡 浩介 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 准教授 (20262074)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 副甲状腺 / 転写調節 / リン・カルシウム代謝 |
研究開始時の研究の概要 |
体内のリン・カルシウム代謝は、副甲状腺を中心とした多臓器間の複雑な調節によって恒常性が維持されていることが解明されてきた。一方、慢性腎臓病に伴ってその調節が破綻すると、2次性副甲状腺機能亢進症が問題となってQuality of Lifeが大きく損なわれる。SHPTにおいては、副甲状腺細胞の機能を抑制するはずのFGF23、カルシウム、ビタミンDなどが充分に抑制機能を果たすことができなくなっているが、なぜそうなってしまうのかは不明である。本研究では、その分子機構を解明することによって、CKD/SHPTにおけるリン・カルシウム代謝の破綻の克服を目指す。
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研究実績の概要 |
PTH遺伝子発現のビタミンDおよびFGF23による抑制の分子機構の解明を目指した。従来までに、線維芽細胞BHK21を用いて、PTH遺伝子エンハンサー・プロモーターを含むレポーターと、副甲状腺特異的な転写活性化因子Gata3-MafB-Gcm2、さらにビタミンD受容体VDRとそのパートナーRXRaを共発現させることによって、ビタミンDの濃度依存的に転写が抑制される実験系を構築していた。本実験系においては、多数の因子を同時に発現させなければならないので、導入した転写因子の発現量や挙動を調べる上で、それらの検出に問題があった。そこで、転写をドライヴするプロモーターの最適化、IRESを利用した多因子の同時発現、検出におけるタグの最適化(PTH転写調節とビタミンDによる抑制へ干渉しないことの確認)などを行った。これらの改良の結果、ビタミンD依存的な転写因子の挙動の変化を容易に観察できるようになった。 また、この系を発展させて、FGF受容体FGFR1とその共受容体Klothoを共発現させることにより、培地に組換えFGF23タンパク質を添加することによって、PTH遺伝子の発現抑制をモニターできる系の構築を試みた。現在までのところ、おおむね成功したように見えているが、FGFR1のキナーゼ活性の依存性や、Klothoの必要性、添加するFGF23の濃度依存性などを検証中である。 一方、副甲状腺機能抑制系の受容体のひとつであるKlothoの発現調節機構について、ゲノム配列の保存性を利用して、ヒトKlotho遺伝子の転写開始点近傍から上流約2.5 kbの範囲をクローニングし、レポータープラスミドを作成した。Gata3, MafB-Gcm2に加え、さらに関与する可能性のある転写因子の候補としてTbx1, Six1, Pax1, Eya1の発現プラスミドを構築し、転写活性を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PTH遺伝子の転写調節に関して、ビタミンDおよびFGF23による抑制の分子機構の解明において進捗を見た。ビタミンDに関しては、ターゲットとなる転写因子がおおむね推測できるところまで進捗した。FGFR1の下流シグナルについても、いくつかの変異体(シグナル分子であるFRS, PLC, Crkがそれぞれ結合しない、など)を利用した知見も得られつつある。一方でカルシウム感知受容体CaSRを介した抑制機構については、マンパワーの制限もあり、残念ながら進捗がなかった。 副甲状腺機能の抑制系受容体の発現調節機構に関しては、Klotho遺伝子の解析を進め、ゲノム領域のクローニングとレポーター作成を行い、線維芽細胞BHK21を利用した再構築系を確立することができ、エンハンサー領域の特定において一定の知見を得た。しかしながら、その他の抑制系受容体であるFGFR, VDR, CaSRに関しては、ゲノム配列の保存性情報を利用したin silicoの解析は行なったが、実際にエンハンサーを同定するためのウェット実験(ゲノム領域のクローニングなど)は遅れている。ただし、PTHとKlothoのエンハンサー・プロモーターのレポーターを利用して、いくつかの候補転写因子の関与について調べ、PTHとKlothoに共通する部分と、それぞれにユニークな部分を見出しており、副甲状腺における転写調節機構の解明という点で進展があった。副甲状腺特異的転写因子でありながら、むしろこれらのエンハンサー活性を抑制するものも見出されており、SHPTにおける抑制因子の候補として興味がもたれるところである。しかし、転写調節機構の全体像を理解するには至っていないので、さらなる解析を加える必要があるものの、方向性としてはおおむね間違っていない感触を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
副甲状腺機能の抑制系の受容体であるKlotho, FGFR, VDR, CaSRなどの転写調節機構を調べることによって、SHPTにおけるこれらの受容体の発現抑制と脱抑制のしくみを明らかにすることを目的としてきた。これまでに、PTH遺伝子に加えてKlotho遺伝子の発現調節の解析を行い、一定の知見を得てきたが、FGFR(1~4), VDR, CaSRに関しては実験的な解析を加えていない。しかし、PTHとKlothoの解析からすでに興味深い知見が得られてきており、研究戦略としては、解析を横に広げる(FGFR(1~4), VDR, CaSRについても並行して行う)よりも、縦に深く進める(これまでのPTHとKlothoの解析を深化させる)方が、目的の達成に近いのではないかとの感触を得ている。ゲノム情報のin silico解析からは、FGFR(1~4), VDR, CaSRのエンハンサー同定は、PTH, Klothoと比較すると難度が高いのではないかとの印象もある。そこで、当初計画を一部変更して、PTHとKlothoの転写調節機構(関与する転写調節因子のさらなる同定)と、ビタミンD、FGF23による抑制の分子機構のより詳細な解明を進めるとともに、未着手であったカルシウム感知受容体CaSRを介したカルシウムシグナルによる抑制機構も併せて解析を進めることにする。
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