成体海馬のニューロン新生のルーツを探ぐる:生後初期から成体期への移行

研究課題番号:17500238

2006年度 研究成果報告書概要

代表者

    • 石 龍徳
    • SEKI, Tatsunori
    • 研究者番号:20175417
    • 順天堂大学・医学部・講師

研究課題基本情報

  • 研究期間

    2005年度〜2006年度

  • 研究分野

    神経解剖学・神経病理学

  • 審査区分

    一般

  • 研究種目

    基盤研究(C)

  • 研究機関

    順天堂大学

  • 配分額

    • 2005年度:1800千円 (直接経費:1800千円)
    • 2006年度:1700千円 (直接経費:1700千円)

研究概要

海馬の顆粒細胞は、成体になっても新生され続けている。海馬の神経回路の中で、顆粒細胞は大脳新皮質連合野からの入力情報を最初に受け取る役目をしている。このような位置にある顆粒細胞が毎日新生され、新しい神経回路を海馬に付け加えるという現象は、海馬が記憶や学習の成立と関係が深いことを考えると大変興味深い。

本研究では、BrdU(チミジン類似物質)、緑色蛍光タンパク(EGFP)遺伝子発現レトロウイルス、細胞増殖マーカーKi67等を用いて、顆粒細胞層内側に存在する神経前駆細胞の、増殖・分化・移動の様式を解析した。また、海馬切片培養法を用いて、細胞の移動を観察した。

増殖性神経前駆細胞の多くはHu(ニューロンマーカー)に陽性であった。また、分裂終了後のニューロブラストはPSA(細胞接着分子NCAMの糖鎖、未熟ニューロンのマーカー)陽性であった。これらの細胞はクラスターを形成していた。クラスター内の細胞はβ-カテニン/N-cadherinを特異的に発現していた。PSA陽性ニューロブラスがクラスターから抜け出すときは、水平な突起を伸ばしながら、水平方向に移動した。その後水平な突起を退縮させ、最終的に垂直な樹状突起を形成した。

以上の結果は、増殖性神経前駆細胞の増殖・分化が起こるクラスター内では、β-カテニン/N-cadherinを介した細胞間相互作用が働く可能性を示唆している。また、PSAはN-cadherinの接着性を低下させると考えられているので、PSAはβ-カテニン/N-cadherin陽性クラスター細胞が、ニューロブラストとなって移動するときに関与する可能性が考えられる。

発表文献

雑誌論文

  • Seki T, Namba T, Mochizuki H, Onodera M: "Clustering, migration and neurite formation of neural precursor cells in the adult rat hippocampus" J Comp Neurol 502. 275-290 (2007),

  • Liu J, Suzuki T, SeKi T, Namba T, Tanimura A, Arai H: "Effects of repeated phencyclidine administration on adult hippocampal neurogenesis in the rat" Synapse 60. 56-68 (2006),

  • 石龍徳, 堀智勝: "側頭葉てんかんに海馬のニューロン新生は関与するのか?-てんかん患者とてんかんモデルラットの比較" 医学のあゆみ 219. 797-798 (2006)

  • Namba T, Mochizuki H, Onodera M, Namiki H, Seki T: "Postnatal neurogenesis in hippocampal slice cultures : early in vitro labeling of neural precursor cells leads to efficient neuronal production" J Neurosci Res (In press). (2007)

  • 石龍徳, 難波隆志: "成体海馬におけるニューロン新生と神経回路形成" 分子精神医学 7. 111-121 (2007),

図書

  • Seki T: "Adult neurogenesis in the hippocampus (分担), In "New Frontiers in regenerative medicine" (Eds, Kusano M, Shioda S)" Springer. 113-120 (2007)

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