計画研究
東アジアの熱帯、温帯、寒帯にそれぞれ属するサケラート(タイ)、北佐久(長野)、天塩(北海道)の森林においてエアロゾル成分の沈着観測を実施し、沈着プロセスの解明および沈着量の把握を行った。1フラックス直接測定天塩における硫酸塩粒子の長期の濃度勾配測定の結果、北佐久と同様、理論値を大きく上回る沈着速度が得られた(平均0.36cm s^<-1>湿度による粒子成長を考慮した経験的なパラメタリゼーションにより、同レベルの沈着速度を推定することができた。また、フラックス測定法の精度向上を目的として、北佐久において緩和渦集積法測定装置のテストを実施した。大気中濃度が高いサンプルにおいて上向時より下向時が高濃度になることが確認され、硫酸塩粒子の沈着をとらえた結果であると考えられた。2沈着量把握サケラートにおけるブラックカーボン(BC)の年間沈着量を推計した。乾性沈着は、濃度と沈着速度がともに高い2~4月に多く、湿性沈着量は、濃度が高く雨季が始まる3月に最も多かった。前者は、バイオマス燃焼に伴う高濃度と風速が大きい時期が一致したこと、後者は、当該高濃度時の降雨によるウォッシュアウトが効いたことによるものと考えられた。一方、繁茂期である6月~11月の沈着量は、落葉期に比べ少なかった。年間沈着量は、乾性沈着が湿性沈着の10倍程度と推計され、測定の不確実性を考慮しても、当該森林においては顕著に乾性沈着が多いことが明らかとなった。3葉面エアロゾル沈着量の解析上記3地点に多摩丘陵(東京)および加治川(新潟)の森林を加えた5地点において、葉面に付着したエアロゾル中のBC量を比較した。それぞれの森林における葉面BC量の年間最大蓄積量を見積り、同研究項目(植物影響)で検討されている樹木活性への影響を評価する上で有益なデータを得た。
2: おおむね順調に進展している
東アジアの森林に対するエアロゾルの沈着速度、葉面へのエアロゾル付着量、年間沈着量等の知見が蓄積されており、最終年度の統合評価に向けて準備が整ったと考えられる。
最終年度である平成24年度は、これまで得られた知見の統合と不確実性の把握を行う。エアロゾル沈着の長期観測を続けている天塩およびサケラートの森林サイトにおける観測を継続し、年々の差を把握すると共に、平成23年度までの調査において得られた沈着速度および葉面付着量に関する知見に基づき、当該地域における広域のエアロゾル沈着量と葉面への沈着の実態を明らかにする。さらに、エアロゾル沈着測定の不確かさを把握するために、計画研究P10と連携し、多摩丘陵サイトにおいて測定精度の検証を行い、上記の結果と合わせて総合的に取りまとめて、東アジアの森林生態系におけるエアロゾルの沈着量と動態の評価を行う。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (12件) 備考 (1件)
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http://www.hino.meisei-u.ac.jp/es/matsuda/research.html