計画研究
本研究組織では、アブラナ科植物の自家不和合性を人為的に制御し、インセスト回避に関わる分子機構を明らかにする。また、自家不和合性に関連した雌雄間の相互作用が同一種内で生殖隔離を生みだしている現象について、これを制御する遺伝子の機能と進化を調べることにより、「遺伝子機能の多様化」との関連を明らかにする。さらに、イネを用いて雄性生殖器官特異的低分子RNAを網羅的に解析することにより、「エピジェネティックな制御」による雌雄間での「ゲノム・遺伝子相関」に関わる分子の相互作用の理解を目指す。平成24年度は、以下の3つのプロジェクトについて、基盤となる実験成果を得た。「シロイヌナズナを用いたインセスト回避機構解明」については、SRK遺伝子に変異が見られるハプロタイプBについて、自家不和合性が復元するかを調査するために、変異を修復した正常型SRKのコンストラクトを作成した。さらに、それをシロイヌナズナに遺伝子導入して形質転換体を得た。「同一種内異種ゲノムが引き起こす新規生殖隔離遺伝子の実態解明」に関しては、Brassica rapaの同一種内新規生殖隔離に関わると考えられる花粉側認識因子(PUI1)について、形質転換体の表現型調査とバイオアッセイの結果、一側性不和合性としての機能を有していることが証明できた。また、PUI1の進化解析のために様々な系統から遺伝子を単離して配列を決定した。「雌雄ゲノム・遺伝子相関因子の網羅的解析」については、イネ葯のsmall RNAの網羅的解析について、低温ストレス応答に関連して、耐冷性弱の「ササニシキ」と耐冷性強の「ひとめぼれ」のトランスクリプトーム比較を、次世代シークエンサー解析により行い、miRNAの発現量について明確な違いを見いだした。
2: おおむね順調に進展している
「シロイヌナズナを用いたインセスト回避機構解明」「同一種内異種ゲノムが引き起こす新規生殖隔離遺伝子の実態解明」「雌雄ゲノム・遺伝子相関因子の網羅的解析」の3つのプロジェクトに関して、それぞれ予定通りの基盤的成果が得られ、次年度に繋がると考えられるため。特にPUI1の機能が証明できたのは、今後の研究遂行のキーポイントとなる。
シロイヌナズナではハプロタイプBの変異を修復したSRKを導入した形質転換体について、表現型を詳細に調べ、遺伝子発現との関連も明らかにする。Brassica rapaの柱頭側認識因子SUI1については、形質転換により機能を明らかにし、配列比較により分子進化を議論する。イネmiRNAでは、ターゲット遺伝子を含め、ストレス応答に関連した相関因子の情報基盤を構築していく。以上の異なるプロジェクトについて、バランス良く必要な労力を効率良く配分して研究を推進する。表現型の花粉管伸長を調べる段階が重要となっているため、顕微鏡設備を整える必要がある。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (25件) (うち招待講演 12件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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