研究概要 |
二本鎖RNAウイルスであるロタウイルスは乳幼児の感染性下痢症の主要な病原因子であり、小腸上皮細胞に感染し増殖する。その下痢症発症の分子機構に関しては単なる腸管上皮細胞のウイルス感染による細胞変性効果によるものか,ロタウイルス遺伝子産物による特異的な分子機構が働いているものなのか、不明である。ロタウイルスの病原性を支配する遺伝子部位およびその遺伝子産物の機能を解析し、ヒトロタウィルスによる急性胃腸炎の分子機構を明らかにすることを目的とした。初年度は主としてロタウイルスの感染系の確立を目的として研究を進め、次年度はこれらの成果をもとに以下の研究を行なった。 1)ウイルスRNAを精製し、そのRNAよりcDNAを調整し、哺乳動物発現ベクタ-に挿入した。現在発現ベクタ-を各種細胞に導入しその遺伝子産物の生理活性を検討中であるがまだ腸性結果をみるに至っていない。 2)我々の研究室でクロ-ニングされた下痢原因性大腸菌の毒素遺伝子とロタウイルス遺伝子の塩基配列の相同性をコンピュ-タ解析ノ-ザングロット法で検討したが両者に相同性はみられなかった。この事実はロタウィルス遺伝子は細菌毒素様生理活性物質をコ-ドしていないことを示唆する。 3)抗ウイルス剤を開発する目的で、ロタウイルスと相補的なアンチセンスオリゴデオキシリボヌクレオチドを合成し、その抗ウイルス効果を検討中であるが、現在までに顕著な抗ウイルス効果を示すオリゴマ-を同定するに至っていない。
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