研究概要 |
環境汚染の防止及び環境資源ストックの保全と経済発展との関係を体系的に分析するために,簡略な分析用としてフレームワーク・モデルを開発するとともに,詳細な分析用具として動学的最適化モデルの改良を試みた。また,グリーン・アカウントの体系を国家の目標体系に導入することにより,環境保全にどの程度の効果があるかについて,地球温暖化問題を対象に動学的最適化モデルを用いて分析した。さらに,グリーン・アカウントによる国際調整メカニズムについて,新しいデコンポジションの方法論を開発・適用して,モデル分析によりその効果を検討した結果,環境資源勘定によっても,国際的な調整の下で温室効果ガスの排出を効率的に抑制できることが明らかとなった。 省エネルギーと経済成長の関係について,産業連関表を用いて1単位の需要が発生した時に使われる化石燃料の消費額を誘発係数として算出し,その時系列変化と国際的特徴を分析し,かつその要因を定量的に評価した。その結果,誘発係数は1970年を100とすると,その後主として省エネ技術の進展で1985年には58まで下がったが,89年には60と上昇に転じていること,そしてその原因は主として需要構造の側の要因であることが明らかになった。このことは今後の省エネ対策が技術開発のみではなく,ライフスタイルや社会システム面での対策が必要であることを示唆していると考えられた。 環境政策における経済的手段の有効性と限界について,地球温暖化および廃棄物問題の分野で検討を加えた。その結果,各国で現実に実施されている経済的手段のほとんどが理論の想定している理想型からは大きく隔たっていることが,また課徴金の多くは直接規制の補完として行われていることが明らかになった。さらに,環境税については政策手段としてだけでなく税体系上の位置を明確にすることの重要性が確認された。
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