研究概要 |
1.象牙質と接着性レジンの接着界面のラマン赤外分析 象牙質とレジンを接着させる前に,ヒドロキシルエチルメタクリレート(HEMA)やグリセロールメタクリレート(GM)など,水酸基をもつモノマーをプライマーとして塗布することが有効とされている。これに化学結合が関与しているか否かをラマン赤外測定により検討した。その結果,あらたな化学結合の生成や重合速度の変化を示唆するスペクトル変化が観測されなかったことから,プライマーの役割は化学効果ではなく,レジンモノマーの歯質浸透性を高めることと推察された。 2.生体親和性付与を目的とするチタン板ハイドロキシアパタイト(HAP)コーティングの研究 擬似体液に浸漬したTi板表面を赤外高感度反射法にて分析を行ったが,今回の浸漬条件では,HAPその他のリン酸カルシウム塩の検出は出来なかった。別の浸漬条件でのコーティングを検討中である。 3.金属とレジンの接着機構の分光学的研究 貴金属に接着性をもつレジン及びその処理剤の界面での接着機構を調べるために,SERS効果を利用した実験を行った。清浄表面をもつガラス板上に,金属を蒸着し,市販の各種試料溶液を滴下しコーティングした試料をラマン測定したところ,SERS活性が認められ,金属表面に直接吸着した分子のスペクトルが得られた。しかしながら不純物分子のスペクトルも重なっており,吸着分子の吸着構造に関する詳細な情報を得るには,さらにサンプリング条件の吟味を要する。 4.接着強さ測定法の検討 レジンと歯質の接着強さを測定する際におこりうる接着テープとボンディング剤溶媒との化学的相互作用の有無を赤外分光法で調べた。
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