研究概要 |
本研究は,q〓0個の実数パラメータλ={λ_1,λ_2…,λ_q}に依存して決まる動的システムS(λ)の族Sに対して,その数学的記述,構造および制御理論への応用を目的としている.まず最初に,状態空間Xが有限次元で,システムSが線形かつパラメータλに関して多項式の場合をq=1とq〓2に分けて考察した.q=1の場合,S1は変数実多項式環上の線形システムとして記述できるので,この環の性質を利用してシステムSの基本構造,特に,可到達性部分加群等の性質について詳しく考察し,外乱除去問題が解けるための十分条件を求めた.さらに,ある性質を満たす最大可到達性部分加群が存在するという仮定の下で,ブロック三角形非干渉御問題が解けるための必要十分条件を求めた.q〓2の場合,Sはq変数実多項式環上の線形システムとして記述されるので,この環の性質を利用してシステムSの基本的構造,特に,伝達関数の分解に関する問題および前置補償器の静的状態フィードバックによる実現の問題について詳しく考察し,ブロック非干渉制御問題が解けるための必要十分条件を求めた.次に,システムSが有限個のシステムの線形凸結合で表される場合を,状態空間Xが有限次元と無限次元の場合に分けて考察した.Xが有限次元の場合,このシステムの基本的構造,特に,同時{(A_i,B_j)|i,j=1,…,r}不変部分空間等の性質について詳しく考察し,同時外乱除去問題が解けるための十分条件を求めた.Xが無限次元の場合,このシステムの基本的構造,特に,同時フィードバック{(A_i,B_j)|i,j=1,2}不変部分空間等の性質について考察し,同時外乱除去問題が解けるための必要十分条件を,ある性質を満たす同時{(A_i,B_j|i,j=1,2}不変部分空間の存在を仮定することによって求めた.最後に,Sが線形でXが有限次元かつλに関して多項式でq=1の場合について,理論的成果を検証する計算機システムを数式処理システムMAPLEを用いて作成した.本計算機システムでは,システムの可到達性と可観測性の判定を行うことができ,さらに,与えられたシステムを可観測かつ準可到達,可観測かつ本質的に非可到達,非可観測かつ準可到達および非可観測かつ本質的に非可到達の4つの部分システムに分解することができる.この計算機システムを基礎にして,極配置や非干渉化を達成する状態フィードバックを求めるシステムを開発することができる.
|