研究概要 |
プロテインキナーゼC(PKC)は外界シグナルの細胞内伝達の主軸となっていて、多くの種類からなる「分子集合体」である。構造の上からcPKC,nPKC,及びaPKCの3群に分類される。これらは、ホルモンや神経伝達物質、細胞増殖因子など多彩な生理活性物質の作用の発揮に関与しているので、それぞれの分子種の活性調節の機構の解明は医学上極めて大切である。本年度の解析により、次の成果を得た。 (1)cPKC群の活性調節 本群はα,β1,β2,γの4分子種より構成されるが、いずれもカルシウムイオン、ジグリセリド、各種不飽和脂肪酸、リゾコリンリン脂質を必要としている。 (2)nPKC群の活性調節 本群はδ,ε,θ,ηの4分子種より構成されるが、カルシウムイオンは不要、しかしジグリセリドによって活性が発揮される。不飽和脂肪酸、リゾリン脂質に対する挙動は分子種により異なる。最近η種分子種はコレステロール硫酸により活性が現れることが判明している。 (3)aPKC群の活性調節 現在不明の点が多い。ジグリセリド、カルシウムイオンを必要としない。 各分子種のPKCについて詳細な酸素化学的検討の結果、すべてのPKC種はセリンリン脂質が必要であり、細胞膜との特有の結合によってその機能を発揮する。しかし各分子種によって、活性に必要とする脂質構成成分が異なっている。特に、外界よりの生理活性物質によって、細胞膜に惹きおこされるリン脂質の代謝様相が異なることが明らかになりつつあり、これらの多様な細胞膜代謝のそれぞれに対応して、各PKC分子種の機能が発揮されている可能性が生じている。この事実は、多彩な生理活性物質の具体的な作用の仕組みの解明に重要な手がかりである。
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