研究概要 |
アシアロ糖蛋白受容体の特異的リガンドである^<99m>Tc-GSAは肝の受容体イメージング及び受容体量のin vivo計測を可能とし,肝予備能を鋭敏に評価できる肝シンチ検査法として活用され始めている。合成ヒトHGF(三菱化学より提供)100μg/kgB.W./dayを注入し,4日間持続投与した。^<99m>Tc-GSAの各種投与量でのk-GSA値の結果では0.05,1.0,2.0mg/kgB.W.と一回投与量の増大に対応してk-GSAは減少した。経時的な全血放射活性測定では,各プロットは指数関数的に減少し,回帰曲線に良好な対応をみることができる。HGF投与群のk-GSAの経時的変化の成績は,投与前,投与開始4,7日後の平均と標準偏差(n=10)は0.17±0.04,0.27±0.07,0.20±0.03であった。投与前値を基準にするとk-GSAは4日後は+61%と有意な(p<0.001)増加をみとめ,7日後は+27%と4日後に比して減少し,前値に復する傾向がみられた。コントロール群(n=5)では0.16±0.05,0.16±0.05,0.17±0.04と有意な変動はなく安定した値を示した。以上の結果よりHGF投与がアシアロ糖蛋白受容体活性を有意に増大させ,投与中止と共に比較的速やかに投与前値に回復すると考えられた。 潜在的な肝代償力の大きさを知るためには,人為的に肝に薬剤を投与しその処理能力をみる負荷試験が必要であり,臨床的な観点からは非破壊的,非侵襲的に確認する手段が求められる。HGF投与2日後は十分な活性の増加はまだみられなかった。投与終了時点の4日後にピークを形成したが,これはHGFの作用を受けて肝細胞の分裂増殖による細胞数の増加がアシアロ糖蛋白受容体の活性総量の増加をもたらし,^<99m>Tc-GSAクリアランスの増加につながったものと考えられた。しかしこの変化は持続せず,投与開始7日(投与終了後3日)以後は減少する傾向がみられた。この変動は肝切除後にみられる肝再生の過程と同様なTGF-β1などに代表される増殖抑制因子の関与が示唆された。今回の結果からは^<99m>Tc-GSAが,HGFの効果発現を定量的にかつ屠殺することなく知ることが可能な検査法になりうることが示唆された。
|