楕円型単純特異点の普遍変形空間からdiscriminant setを除いた空間の基本群を楕円型Artin群と呼ぶ。このArtin群の構造を楕円型Dynkin図形(vanishing cycle)の言葉で表現することが、この研究の目的である。まず、A.B.Giventalのtwisted Picard-Lefschetz理論を用いて、楕円型Artin群のq-変形されたmonodromy表現を考える。このdataをもとにして生成元と関係式を楕円型Dynkin図形の言葉で表すことが出来た。また、副産物として楕円型Hecke環なる概念が定義出来、I.Cherednikのdouble affine Hecke環の部分環と成ることが示される。更に、楕円型Hecke環の有限次元既約表現が、A.B.Giventalのq-変形されたmonodromy表現として得られた。楕円型Artin群の概念は、斉藤恭司氏の楕円型ルート系の研究によりさらに一般化されている。即ち、楕円型Cartan部分環(楕円型Lie環がある)から無限枚の超曲面を除き、それを無限群であるWeyl群でわった空間の基本群を楕円型Artin群と呼ぶのである。この一般化された楕円型Artin群に対しても、affine Dynkin図形に1個頂点を付け加えた楕円型Dynkin図形の場合、同様の事実が成り立つことが分かっている。
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