本年度は昨年度に引続き、非可換な時空上の場の理論との関係をまず調べた。昨年度の研究によって、行列模型をある種の背景場の回りに展開すると、自然に非可換時空上の場の理論が出てくることが示され、更に非可換時空上の場の理論についての詳しい性質がわかってきた。この特殊な背景場を考えることで、自由に動かせるパラメータが導入でき摂動展開などの手法が使えるようになる。本年度はこの性質をうまく利用して、非可換な時空上のゲージ場の理論になぜ重力が自然にはいっているのかを考察した。特に、Randall Sundrumたちによって提唱されたメカニズム、すなわち重力のモードの中で、10次元の中の4次元面にバウンドされる0モードが存在し残りのモードは重なりが小さいため4次元重力には影響を与えない様になっている、が我々の行列模型でも働らく可能性のあることを示した。また、非可換時空上の場の理論をバイローカル場を使って展開し高いスピンの場が自然に出てくることも示し、ゲージ理論の中にどの様にスピン2の重力子が入り得るかを調べた。 この他、曲がった時空の一番簡単な例として非可換球面上のゲージ理論を行列模型から導出すること、IIB行列模型の自然な拡張として超対称リー代数を使った行列模型を提唱しIIB行列模型ではグローバルな対称性でしかなかったSO(10)をローカルな対称性としてもつ行列模型を考察した。
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