研究概要 |
Mycoplasma salivarium(Ms)に存在する分子量44kDaのリポタンパク質(LP44)がヒト正常歯肉線維芽細胞(HGF)に対してICAM-1発現誘導活性を示した。Lp44のICAM-1発現誘導活性はproteinase K処理で影響を受けなかったが、lipoprotein lipase処理で消失した。Lp44のN末端アミノ酸配列はCGDPKHPKSFTEWVあった。また、エドマン分解が可能であったことから、システインのアミノ基はフリーであることが示唆された。Lp44の活性発現領域の構造ならびに性状を明らかにするために、Lp44をproteinase Kで処理した後、HPLCによる逆相クロマトグラフィーを行った。活性物質は高い疎水性を有し、赤外吸収スぺクトルにより脂肪酸がエステル結合している物質であることが示唆された。これまで、単球を活性化するリポぺプチドがMycoplasma fermentansから精製され、その構造はS-(2,3-bisacyloxypropyl)-CGN-NDESNISFHEKであると報告されている。また、原核生物のLpはN末端のシステインにリピドが結合していることが知られている。これらのことから、Lp44のN末端リポぺプチドが活性物質であり、その構造はS-(2,3-bisacyloxypropyl)-CGDPKHPKSF-TEWVではないかと推測された。そこで、脂肪酸としてパルミチン酸を用い、S-(2,3-bispalmitoylpropyl)-CGDPKHPKSF(以後、FSL-1)を化学合成した。FSL-1はHGFに対して強いICAM-1発現誘導活性を有していた。さらに、FSL-1はHGFに対してIL-6を、また、卓球系細胞株であるTHP-1細胞に対してTNF-αを誘導した。このように、Ms細胞のLp44のリポぺプチト部分はHGFならびに単球・マクロファージを活性化することが示唆された。
|