研究概要 |
胎児に対するTNF-α投与の影響を、確認するため、妊娠1日目より出産時までの毎日、ウィスター系妊娠ラット(週令9週目にて交配)にTNF-α(1μq/kg)を投与した。生まれた仔ラットを生後3週目まで飼育し、その後行動観察実験に供した。オープンフィールドテストとして、情動性の不安定な場合に出現するとされている歩行と立ち上がりが、また情動性の安定した状態を意味する行動と考えられている毛づくろいが観察された。同時に学習能力や空間認知能力を比較する目的で強制水泳実験が施行された。歩行、立ち上がり、毛繕いは各個体につき各10分間観察されその回数が数えられた。この一連の実験は時間をおいて3回施行され、各回に3試行された。強制水泳実験においては、ラットを水を満たしたプールに入れてから水面上にあるプラットフォームに到達するまでの時間(秒)を計測した。これは各個体につき時間をおいて3回施行され、各回に3試行された。観察結果は平均値と標準偏差により表現された。歩行はTNF-α投与群では77.4+30.3、TNF-α非投与群では61.2+23.6であった。立ち上がりはTNF-α投与群では19.1+10.2、TNF-α非投与群では15.6+5,0であった。毛繕いはTNF-α投与群では3.3+1.1、TNF-α非投与群では5.2+1.5であった。強制水泳実験では1回目がTNF-α投与群では7.3+3.1、TNF-α非投与群では5.7+2.2であった。2回目がTNF-α投与群では6.7+3.9、TNF-α非投与群では4.1+3.3であった。3回目がTNF-α投与群では4.5+2.7、TNF-α非投与群では2.3+0.6であった。これらの結果よりTNF-αの投与がラットの情動性を不安定とし、学習能力を低下させる傾向があることが示された。統計的には有意の差は認められなかったが、母集団が少ないため(N=5)今後母集団数を増やしていく必要があるものと思われる。
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