三年目となる本年度は、引きつづき史料収集に努めるとともに、外務省警察について中心的に検討を加えた。 まず、史料では、防衛研究所図書館において、「陸大日誌」などを中心に閲覧調査をおこない、軍による社会主義運動への警戒の経緯と、アジア太平洋戦争下の東南アジアにおける憲兵隊の活動の実際や軍政の実態に関する史料を入手した。また、早稲田大学の太平洋アジア研究科所属の図書室において「西島コレクション」の調査をおこない、軍政に関する史料を集めることができた。国立公文書館では、「返還文書」や「公文類集」などのなかから、やはり軍政関係の史料を調査した。 外務省警察については、ちょうど復刻中であった『外務省警察史』の完結にともない、その解題をまとめた編纂の経緯などに注目することにより、「在満外務省警察史」から「外務省警察史」へ構想が膨らんだこと、当初の編纂期間の大幅な延長にともない、一九四〇年までの外務省警察の活動ぶりが書き込まれることになったなどを明らかにすることができた。また、その編纂の手法も、いわば「外務省警察史料集成」という趣きであり、これらを土台として、本格的な外務省警察史を構想することの必要性が再認識された。 さらに広義の治安体制の一環をなす「経済検察」について検討する機会があったが、そこでもとくに植民地朝鮮・台湾や「満州国」の「経済警察」「経済司法」のあり方にいくらかの目配りをすることができた。「大東亜治安体制」という大きな観点からみるとき、こうした統制経済にかかわることや教育思想統制の問題についても、おのずから関心を寄せる視点をもつことができるようになった。来年度は最終年度として、それらの問題を含め、「大東亜治安体制」の構造と実態についての全体的な構想を提示したい。
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