四年目の最終年度となる本年度は、「大東亜治安体制」の総体について論文化する予定だったが、なお史料調査と個別論文の積重ねが必要であることを痛感し、そのなかで「大東亜治安体制」の象徴的存在といえる「外務省警察」に焦点をあてることとした。 これまで集めた史料を読み直すとともに、復刻の『外務省警察史』を丹念に検討し、外務省警察についての全体像の構成を考えた。それにより、「第一部 朝鮮・韓国における外務省警察」「第二部 中国における外務省警察I「満洲」における外務省警察II「間島」における外務省警察III中国関内における外務省警察」「第三部 外務省における外務省警察の位置」という構成で、復刻版『外務省警察史』の構成を踏襲することになった。実際に文章化の作業に着手すると、なお必要な史料が不足していることがわかり、外交史料館などでの調査を並行して行った。また、インターネットによる「アジア歴史資料センター」からの情報引出しは、大いに役立った。 一月には、京大人文科学研究所の共同研究「領事館警察の研究」の場で、先の全体構想と第二部IIの一部を報告する機会を与えられ、有益な批評を得た。なお、その機会に人文研蔵書と滋賀県立大学「朴慶植文庫」の調査をおこなった。
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