本研究は先の研究「地域における伝統的音楽文化の理解-保育科学生の実践を通して-(科研平成8〜10年)に基づいた継続研究である。本研究では保育者を目指す学生が、地域に伝承された音楽文化の価値や意味を理解し、将来、保育に位置づけることができるようになるための教育内容や方法を、学生に内在する伝統的な音楽文化に基づいて検討することを目的としている。今年度の研究成果は次の通りである。 1 日本の各地域にのこる祭りと民俗芸能を人のくらしや音楽等の観点から調査した。主な調査地は次の通りである。沖縄県那覇市、沖縄市、岩手県遠野市、宮崎県高千穂町、三重県伊勢市、その他。また五島に伝承されたわらべうたを人のくらしとの関わりのもとに調査した。 2 保育内容「表現音楽」および「幼児教育セミナー」において学生に地域の祭りやそこで演じられる民俗芸能等を理解させるために、今年度も継続的に沖縄の民俗芸能「エイサー」の鑑賞および実践を行った。また福岡県の民謡「黒田節」北海道民謡「ソーラン節」の実践を行った。また、他大学幼児教育科の16年間における継続的な民俗芸能の実践を調査し、本学における実践との比較を行ない、多くの示唆を得られた。 3 各地域において収集した資料やビデオ、写真等は授業の資料、および教材として利用した。学生の反応については自由記述によるアンケート等によって調査した。研究成果については「全国大学音楽教育学会」全国大会において実践報告を行った。また、平成11〜14年までの4年間における研究成果をまとめ報告書として作成した。 まとめ 地域にのこる民俗芸能の実践を行う上に重要なことは、そこから何を学生に伝えようとするのか、何を期待するのかを明確にしていくことである。音楽的な技術の習得や理論的な理解のみに終わることなく、学生自身の人としての尊厳を高めることにつながらなければ意味がないと考える。
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