本研究は先の研究「地域における伝統的音楽文化の理解-保育科学生の実践を通して-、科研8〜10年」に基づいた継続研究である。本研究では保育者を目指す学生が、地域で行われる祭りとそこで演じられる民俗芸能の価値や意味を理解し、将来、保育に位置付けることができるようになるための教育内容や方法を学生に内在する日本の伝統的な音楽文化に基づいて検討することを目的としている。4年間の研究成果は次の通りである。 1 日本の各地域における祭りと民俗芸能を人のくらしや音楽等の観点から調査した。4年間にのべ24箇所を調査した。主な調査地は次の通りである。 宮崎県高千穂町(神楽)、沖縄県沖縄市、那覇市(エイサー)、大阪府大阪市(四天王寺舞楽)、岩手県遠野市(遠野郷八幡宮の祭りと民俗芸能)、その他、 2 地域の人のくらしと音楽の関係を明かにするために、子育ての方法とわらべうたを調査した。調査地は遠野、および五島の2箇所である。 3 保育内容「表現音楽」および「幼児教育セミナー」において、学生に地域の祭りや民俗芸能を理解させるために福岡県の民謡「黒田節」、北海道の民謡「ソーラン節」その他の実践を行った。また沖縄の盆踊り「エイサー」の実践は平成10年から毎年継続的に行った。学生の反応については自由記述によるアンケートによって調査した。 4 各地域において収集した資料や撮影したビデオ、写真等は授業の資料および教材として利用した。研究成果については学会誌に投稿した。また授業の成果の一部を著書「教師の学び方」として報告した。 まとめ 学生に地域の祭りや民俗芸能を理解させるには、教材としてどのような地域と芸能を選択するのかが重要である。今回、指導の一環として高千穂町の夜神楽や沖縄のエイサー、福岡県の民謡等をとりあげた。その結果、民俗芸能に触れる経験は、学生が自ら人間関係の在り方に気付き、人とつながる喜びを実感した時に、意味あるものになると思われる。さらに地域に伝承された音楽文化を通して、過去とのつながりのなかに自己を位置付けることが出来る視点を持たせることが大切と考える。
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