大腸菌を用いた骨形成因子作製精製法では、以前より行われているチャイニーズハムスター卵巣細胞などの哺乳動物の細胞を利用する方法に比べ、非常に安価で容易に骨形成因子を大量生産することが可能である。もし、この手法で有効な骨形成因子が作製出来るなら、霊長類では齧歯類に比べ骨形成活性が低く、臨床において大量の骨形成因子が必要となるという問題点を解決することが可能である。 われわれは本研究費補助金を受け、大腸菌を用いた骨形成因子作製精製法に工夫を凝らし、これまで不可能とされてきた十分な骨誘導活性を持つ骨形成因子変種を得ることに成功を収めた。この大腸菌由来骨形成因子は、哺乳動物細胞由来骨形成因子と比較しても、より骨誘導活性が高く、非常に有用であると考えられる。さらに、少量の骨形成因子で少しでも大量の骨再生を得るべく、エルカトニン、線維芽細胞成長因子との併用や高圧酸素療法の利用による骨誘導活性の増強効果を検索し、各々の有効性を確認した。 続いてわれわれは骨形成因子発現アデノウイルスベクターを利用することにより、有効性が高く、安価で、臨床使用に際し、有用な方法を検索した。免疫抑制剤を利用すれば、骨形成因子発現アデノウイルスベクターでの遺伝子導入法は蛋白質を直接使用する方法に比べ、有効性が高いことは明らかである。しかし、全身への免疫抑制剤投与には副作用が生ずる可能性があり、より全身への影響の少ない手法について検討した。タイプコラーゲンをアデノウイルスベクターの担体として使用した場合、ベクターが徐放化され効果が持続するばかりか、免疫反応を押さえることが出来、本ベクターによる骨誘導が可能であることが確認された。一方、免疫抑制剤の少量局所投与でも十分な骨誘導活性を示すことも確認出来た。 本研究結果より、大腸菌由来骨形成因子変種および骨形成因子遺伝子導入法を利用した骨再生は臨床応用可能なことが示唆された。
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