カビは住宅においても病院においても必ず存在する。しかし、病院では身体的な弱者が集まるところであるので、カビが増殖するような環境であってはいけない。東京都杉並区の外断熱を行った住宅で季節ごとにカビの調査を行った。一方千葉県と長野県の総合病院で外壁を外断熱改修を行った部分と行わなかった部分があり、両者について平成13年から平成14年にかけて真菌の調査(空中浮遊菌、落下菌、付着菌)を行った。その結果両総合病院とも外断熱改修を行った部分は行わなかった部分に比べ明らかに真菌数が少ないという結果を得た。これら病室で採取したカビを研究室に持ち帰り1週間培養の後、同定を行った。ここではどの住環境に一般的に検出される菌種が検出されている。同様に長野県のO総合病院でも外断熱の効果が顕著にあらわれた。この病院では西病棟が外断熱が施され、東病棟では施されていない。平成14年1月6日の夕刻それそれの外表面をサーモカメラで撮影したところ外断熱を施した部分では表面温度が外気温度とほぼ等しい0℃前後であったのに対し、断熱の施されていない東病棟では7℃前後となり、室内の熱が外気に向けて大きく流失している様子が判明した。京都議定書を批准し二酸化炭素排出を進るるには省エネルギーが最も大切であり、特に断熱はわかりやすく効果も大きい。寒地における建築の断熱は大いに意義があり、特にわが国で遅れてしまった外断熱の健全な発展は大切である。今回外断熱を施すことでカビが減少する効果が得られたが、これは外断熱の効果が最も顕著に発揮できる冬季の測定結果であるので、今後とも調査を続行し、中間期、夏季の結果も得たうえで結論を出したい。
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