研究概要 |
Grantの公式及び申請者によるそれを一般化した公式(これらについては申請書をみられたい)は超楕円曲線に対するアーベル函数のn倍公式の,いはば分子をとり出したものであり,申請書には,これについて立ち入った研究をする旨を記した.しかるに本年度の始め(2000年5月)に,分母の方が大変興味深い行列式による表示をもつことがわかった.これは楕円函数論で古くから知られてゐるFrobenius-Stickelbergerの公式とKiepertの公式と呼ばれるものの完全な一般化になってゐる.そこで今年度をこれについて研究し,各地で発表(早大数論セミナー,日本数学会など)し,さらに論文にまとめることにあてた.本研究の延長線にはGauss和の符号決定問題があるのであり,分母の方がより一層有効と思はれるので,これは研究の本すじを変へたものではない.申請時点では分母に有効性を認めることができなかったのである.次年度も,今の所,分母の行列式表示とその応用を探る予定である.なほ,行列式表示そのものはレフェリー制の学術誌に投稿中である.論題は"Determinant expression for Abelian functions in genus two"である.
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