研究概要 |
本研究課題の当初の研究対象であったGrantの公式,及び研究代表者大西による公式は,円分型と呼ばれる特殊な超楕円曲線のある自然なアーベル函数に対するn倍公式の分子を与へるものであつた。しかるに前年の研究により,分母が興味深い行列式表示をもつことがわかり,しかもそれは,あらゆる超楕円曲線に対して成り立つと思はれた。行列表示としては楕円函数におけるFrobenius-stickelbergerの公式,Kiepertの公式のそれぞれの一般化を発見できた。後者に関しては,前年度では種数2までのものであつたが,松谷茂樹氏(キャノン)の指摘と協力により,任意の種数に拡張できた。一方前者については種数2を3に一般化はしたもののさらなる一般化は困難にみえた。しかし昨年10月ごろに漸く予想を得て,さらにごく最近,完全な証明を得た。任意種数に対するKiepert型の公式と種数が2,3のときのFrobenius-Stickelberger型の公式については早稲田大や中央大において口頭発表し,中央大での発表と上記予想については11.研究発表の項目にあげたものとして出版される。また種数2の場合を発見した,記念碑的な論文も出版されることになった。プレプリントをWeb pageにおいたところ,特に海外のソリトン研究者より多くの問ひ合せがあった。論文を作成する段階で,細部にわたり,分担者尾台から協力を得た。
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