研究概要 |
これまで制御工学を用いた血槽制御システムの開発をおこない、モデル予測制御や状態予測制御により安定した血糖制御が可能であることを示してきた。しかし持続血糖負荷時には時として制御が困難な例も出現した。これはインスリンの効果の非線形性と時変性にあると考え,インスリンの効果を定期的に同定し,それに応じて制御装置のゲインを変更するというゲインスケジューリング機能を付加したシステムに改善し、動物実験でその有用性を評価した。雑種成犬に膵全摘を施行し、高血縮状態であることを確認。グルコース持続負荷として、10‰グルコース0.5、1,2ml/kg/hを持統静脈注入し、血糖目標値を100mg/dlに設定して従来のモデル予測制御単独とゲインスケジューリングを付加した制御との比較を行った。これは制御開始後60分毎に、現在までのインスリン注入データと過去60分間の血糖値データを用いて最小二乗法により求めるものである.システムの構成は、成犬の静脈より血糖位の連続測定を行い、そのデータをコンピュータに入力。速効型インスリンを用いてコンピュータで計算された量を静脈投与した。グルコース持統負荷時の制御において、モデル予測制御単独ではコントロール困難な例が生じた(コントロール率50%)。しかしゲインスケジューリング機能を付加する事によりコントロール率が大幅に上昇し(85%、p<0.O1)、より安定した血糖制御が可能であった。重症糖尿病患者や周術期患者の血糖管理の良否は、術後の合併症を左右し患者の生死や予後に密接に関わってくる。今回われわれは、ゲインスケジューリングを付加したテーラーメイド機能をモデル予測制御に加えることで、より安定した血糖コントロールが可能であることを示した。
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