研究概要 |
無髄歯がいかに脆いものであるか、さらには歯髄除去に要する患者・歯科医の時間的、経済的損失は極めて大きいなどの問題がある。この解決のために、細菌本体やその産物によって引き起こされた炎症部位のみを除去し、残っている歯髄組織の幹細胞・未分化間葉系細胞の分化を誘導し、歯髄を再生させるための研究を進めた。しかし、急激な進展をみせている胚性幹細胞(ES)も、その定義が敢然には定まっていない。最近、ES細胞をはじめとする多能性幹細胞の分化を同定する指標の一つとして、分化段階特異的に発現量が変化する細胞表面抗原が明らかになってきた。 SSEA-1(Stage Specific Embryonic Antigen-1)は、マウスでEmbyonalCarcinomaCell(EC)Embryonic Stem Cell(ES),およびEmbryonic Germ Cell(EG)で発現するものの、ヒトではEmbryonic Germ Cell(EG)のみで発現する。しかし、SSEA-4(Stage Specific Embryonic Antigen-4)は、ヒトではEC,ES,EGの全ての細胞で発現するもののマウスでは発現はみられない。 このことを基に、協力の得られたヒト抜去歯歯髄とマウスの上顎大臼歯歯髄を免疫組織化学染色を施し、顕微鏡で観察した。その結果、ヒト歯髄およびマウス歯髄組織細胞の一部で、細胞表面を覆うようにSSEA-1の発現がみられた。一方、同じようにヒト健全歯髄組織の一部の細胞全体にSSEA-4の発現が見られた。平成16年度は、特にヒトの未分化細胞で最近明らかになってきたTumor Rejection Antigen 1-60(TRA-1-60)とTRA-1-81の発現をヒト歯冠エナメル質・象牙質での窩洞形成歯髄について検討を加えたが、両者の発現は認められなかった。
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