研究概要 |
背景:当科でのTHP-ADM,CDDPおよびPEPを併用した術前動注化学療法(TPP療法)に関し,橋本ら(1993)は優れた臨床1次効果について報告した.当科の森は第21回日本頭頸部腫瘍学会で,stageIVの5年生存率が静注群で43.6%に対して動注群で73.3%であったと報告した. 当科で行った術前化学療法の実験的検討から,先行投与薬剤THPが後続薬剤CDDPの特にリンパ節への組織移行性を高めることが裏付けられた.しかし,当科のKomatsu et al.(1997)の臨床的検討でgranisetron導入後TPP療法の臨床1次効果が低下していた. そこで,TPP療法でgranisetronがCDDPの組織移行性に影響しているか否かを検討した. 対象ならびに方法:平均体重約3kgの雄性日本白色家兎の足背部に移植したVX2癌を対象とした.実験群では,大腿動脈よりTHP-ADM1mg/kgをbolusで先行投与し,23.5時間後耳静脈よりgranisetron 1mg/kgを投与し,30分後にCDDP2mg/kgを大腿動脈より動注.対照群は,granisetronを投与せず,CDDP投与30分後に膝窩リンパ節を摘出し,CDDP濃度を測定した. 結果:リンパ節内のCDDP濃度は,実験群では1.81±0.08μg/g,対照群では3.39±3.96μg/gで有意(p<0.05)に移行性が低下していた. 考察:実験的にもgranisetronがCDDPのリンパ節への移行性を低下させていることが明らかとなり,術前動注化学療法の臨床効果の低下の原因となりうると推察された.
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