人は必ずしも意識化できない手がかりをもとに、かなり正確な判断を下すことができる。そうした判断を感性情報処理の能力のひとつと考えると、でたらめさ(ランダムネス、あるいは逆に、隠れた秩序)の程度についての評価も、そうした処理能力の一端と言えよう。本研究では、ランダムネスの知覚と評価を通して、感性情報処理のあり方を考えることを目的としている。 本年度は、作成法により、主観的なランダムネスに対応する物理値の探索を行うとともに、規則性とランダムネスの関係、デザイン性(美的配置)における規則性とランダムネスの関係、作成時と評価時におけるランダム性の捉え方の相違、ランダムネスの時間的生成過程、準拠枠の影響、等を検討することとした。 方法:円および正方形の枠中に、ドット(9個)をランダム、規則的、デザイン的の教示のもとに配置させ、作成されたパターンを、dnn関連値(Dnn値、面積で基準化したdnn、dnnの標準偏差)およびフラクタル値(枠あり、なし)により分析した。また、得られたパターンを別の評定者に、いずれのパターンであるのかを判断をさせ、相関を求めた。 結果:dnn値の分散および単位面積あたりのdnn値は、規則的とそれ以外を、フラクタル値(枠なし)は、ランダムとそれ以外を峻別できることを示した。また、dnn分散値はランダムとデザイン的に、フラクタル値は規則的とデザイン的に近似性を示した。これらの結果は、ランダムネスの指標としてのdnn関連値と、規則性指標としてのフラクタル値という観点から考えると説明がつく。なお、枠に関してはパターン配置に影響が見られたものの、物理値に関してはどの値にも十分には反映されなかった。さらに、作り手の意図とその伝達があらたな問題として浮かび上がるとともに、作り手は隠れた秩序を、評定者は等間隔性を基準に、作成または判断していることも示唆された。
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