研究課題/領域番号 |
14042211
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
和田 忠士 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 講師 (60262309)
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研究分担者 |
片岡 浩介 奈良先端科学技術大学, 大学院・バイオサイエンス, 助教授 (20262074)
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キーワード | 環境ホルモン / 内分泌攪乱物質 / フタル酸 / アルキルフェノール / アトラジン / タンパク質 / レセプター / アフィニティー |
研究概要 |
高性能ビーズのラテックス微粒子の表面に、内分泌攪乱物質(Endocrine Disruptors : EDs)に含まれるフタル酸エステル、アルキルフェノール、アトラジンを共有結合を介して固定化し、細胞(子宮頸癌細胞由来HeLa細胞およびヒト乳がん細胞由来MCF7細胞)の粗抽出液からこれらのEDsに特異的に結合する生体側レセプター分子(タンパク質)の精製を試みた。また、精製条件を検討することにより、EDsとそれぞれの結合タンパク質の間の親和性が異なることがわかった。その後、フタル酸エステルとノニルフェノールに高親和性を有するタンパク質を大量に精製し、質量分析計を用いた解析によって部分アミノ酸配列を決定することに成功した。次いで、これらのタンパク質で興味深いものを選択し、対応するcDNAをRT-PCR法により単離し、大腸菌発現ベクターに組み込み、組換えタンパク質の調整を行った。一方、ノニルフェノールに選択的に結合する複数のタンパク質の内の一つは既知タンパク質であり、特異抗体を容易に入手することができた。その特異抗体を用いたウエスタンブロット法により、ノニルフェロールとの結合の親和性に関する解析を行った。さらに、抗エストロゲン受容体抗体を併用しMCF7細胞の粗抽出液で検討したところ、ノニルフェノール固定化高性能ビーズ精製画分にエストロゲン受容体に加え今回新たに同定したタンパク質が同時に検出されることがわかった。以上の結果より、ノニルフェノールの場合は、新たに同定した選択的結合タンパク質がエストロゲン受容体と同時に、あるいは同程度のアフィニティーでノニルフェノールに結合することが示された。このことは、現時点でEDsの生体に及ぼす影響のメカニズムに関する明確な結論が得られていない状況で、EDsのエストロゲン受容体とは異なる新たな生体側受容体の存在を物質レベルで証明できたことで非常に意義深いと考えられる。また、本研究成果は、生体内に未解明のEDs依存的反応が存在することを示唆しており、今後EDsに関する研究に新たな視点を与え、その分子レベルでの解析に貢献するものと考えられる。
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