研究概要 |
臨界温度・臨界電流・臨界磁場などの超伝導特性は,作製・使用中に機械的・熱的・電j磁気学的応力(ローレンツ力)場にさらされるので,ひずみや損傷によって低下する。そのため,力学的見地からの材料評価と高超伝導特性確保要件の把握は課題の一つとなっている。本年度は,Nb-Ti/Cu及びBi2223/Ag超伝導複合線材の静的及び繰り返し応力下での微視的破壊の様相ならびに損傷と臨界電流との関係を調べた。得られた主な知見は以下のとおりである. 超伝導電流を輸送するフィラメントが延性的なNb-Ti/Cu超伝導複合線材の繰り返し応力下での変形・破壊挙動とその臨界電流に及ぼす影響について調べ,損傷メカニズムは静的応力下では繊維のマルティプルネッキング,繰り返し応力下では応力の低いときは安定化銅き裂の進展によるフィラメント破壊,応力が高いときはフィラメントの著しいマルティプルネッキングであることを明らかにした.また繰り返し応力下での材料全体の破壊要件は正味応力基準で与えられることを初めて実験的に明確に示した.臨界電流はこれらの損傷の集積によって低下し,特に繰り返し応力下では,中間応力レベルが,臨界電流低下の原因となる損傷を試料全体にわたって生じさせることを明らかにした. 超伝導フィラメントが脆性的に破壊するBi2223(Bi_2Sr_2Ca_2Cu_3O_x)/Agでは,損傷の種類としては,静的引張り応力下では,Bi2223フィラメントの横割れ,縦割れ,フィラメントと安定化銀の界面のはく離,曲げ応力下では,これらに加え,圧縮側での座屈があることを見出した.これら損傷は材料内各所で生じ,空間的に分布することから,臨界電流には試料長さ依存性があることを明らかにし,さらに短尺試料の結果から長尺試料の臨界電流を予想する方法を考案した.また,曲げ損傷と臨界電流の相関解析から,フィラメントの圧縮強度を評価することに成功した.
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