研究課題
基盤研究(B)
口腔内疾患の代表である齲蝕は、ミュータンスレンサ球菌が主な原因となって起こる慢性細菌感染症である。細菌感染症においては、病原菌の病原性の発現や宿主免疫機構からの回避にはバイオフィルムの存在が大きく関わっていることが明らかになっており、齲蝕においても歯面におけるバイオフィルム形成が重要な発症のステップである。そこで、代表的なプロバイオティックスである乳酸菌を用い口腔内バイオフィルム形成に対する効果を検討した。本研究ではE2F-1^<KO>マウスを使用した。このマウスは唾液分泌量が低下しており、口腔内に摂種した菌を比較的長時間検出することが出来る。そこで、齲蝕原因菌としてミュータンス菌(Streptococcus mutans MT8148),乳酸菌としてフェカーリス菌(Streptococcus faecalis 129BIO3B)をこのマウスの口腔に接種し、一定時間後に歯面に残るミュータンス菌数を計測することにより、ミュータンス菌の付着に対する乳酸菌の有効性について検討した。その結果、ミュータンス菌とフェカーリス菌を同時に接種することにより、ミュータンス菌の初期付着菌数は減少する傾向にあった。しかし、ミュータンス菌接種後にフェカーリス菌を接種しても、残存するミュータンス菌数に変化は見られなかった。これらのことから、ミュータンス菌が既に付着している場合は、後から乳酸菌を投与してもミュータンス菌を歯面から剥離させるような効果はないが、同時に接種することにより付着するミュータンス菌数を減少させることが出来る。また、S.mutansに対する、S.mitis、S.sangiusなどの数種類の口腔常在細菌との共生関係を検討するため、Co-incubationを行った結果、S.mitis菌種のうち幾つかの菌種でS.mutansのバイオフィルム合成を抑制する菌種があることが明らかとなった。
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