ヒト肝細胞癌44症例及びそれらの非癌部組織を用いp53経路関連分子であるp14遺伝子の突然変異、欠失、プロモーターのメチル化異常を、それぞれPCR-SSCP、直接塩基配列決定法、multiplex-PCR、メチル化特異的PCRを用いて検討し。さらにその遺伝子発現をReal-Time PCRを用いて解析した。また、同一症例におけるp53異常を免疫組織染色法を用いて検討した。その結果、44症例中2症例の肝癌組織にp14遺伝子エクソン2の突然変異が、また1症例の肝癌組織にp14遺伝子エクソン2の欠失が認められた。一方、p14遺伝子プロモーターの異常メチル化が認められた症例はなかった。28症例においてReal-Time PCRを用いてp14遺伝子の発現を検討し、p14遺伝子エクソン2の欠失が認められた肝癌では、その発現は認められなかったが、その他の症例では非癌部に比べ、肝癌部においてp14遺伝子の発現が亢進していた。さらにp14遺伝子の癌部での発現亢進は腫瘍の分化度と相関し、高分化肝癌と比較し低分化肝癌でより強い発現が認められ(p=0.108)、腫瘍の増殖能を反映する可能性が示唆された。一方、12症例(27.2%)の肝癌症例ではp53蛋白の免疫組織染色で強発現が認められ、p53異常があると考えられた。p53異常が認められた12症例中、高分化肝癌は1症例のみであったが、p14遺伝子の異常が認められた3症例は全例高分化肝癌であった。以上の結果より、一部の肝癌ではp14遺伝子の異常が肝発癌に関与すると考えられ、またp53異常が高分化肝癌に少ない(p=0.042)のに対しp14遺伝子は高分化肝癌にも認められ(p=0.032)発癌のより早期よりp53経路の破綻が肝発癌に関与すると考えられた。
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