生理的条件下における心拍ゆらぎの成因解明 1.呼吸性不整脈の確認 研究代表者はこれまでの研究においてニワトリ雛の代表的な3パターンの心拍ゆらぎを見いだした。そのうち、ペースライン心拍数が50-80bpmの幅をもつ心拍変動をタイプIゆらぎと定義したが、このベースラインは0.4〜1.2Hz(0.8〜2.5秒)の周期的変動であることがわかった。同時に、この周波数帯はアクセルロッドらの研究以来、呼吸に起因すると言われてきた。ニワトリ雛においてもヒナの呼吸数をカウントして周波数分析によるピーク周波数と一致することを確認している。本研究ではまず呼吸性不整脈の求心路である副交感神経をアトロピンによって遮断した。その結果、薬剤投与後に心拍上昇と共に呼吸性不整脈が消失した。っづいてニワトリ卵で報告されたコンデンサーマイクロフォンを利用した呼吸と心拍数の同時計測法をヒナに試みた。ニワトリヒナは動くために計測の困難が予測されたが、呼吸と心拍数の同時計測に成功した。解析の結果、タイプI心拍ゆらぎと呼吸信号の変動周期は同一であることが確認された。これらの事象よりタイプI心拍ゆらきは呼吸性不整脈であると断定できる。 2.低周波心拍ゆらぎの成因解明 次に0.04〜0.1Hz(10〜25秒)周期で50-100bpmの振幅を持つ周期的な変動であるタイプII心拍ゆらぎの成因についての解明を試みた。「体温調節に起因するゆらぎならば低温時に現れ、適温時には現れにくい」という仮説たて、その検証を行った。比較的高い温度環境下(例えば35℃)においてあるヒナの心拍数を2時間計測し、これをコントロールとする。その後、ヒナを低温環境(恒温恒湿器で25、15℃一定)に暴露して2時間の心拍数を計測し、暴露前後と比較・検討する。結果、低温暴露時に低周波ゆらきが発現し、交感神経活動が亢進され逆に適温に戻すとゆらぎは消失した。この周波数帯のゆらきの成因は血圧反射の可能性も残っているために今後詳細な研究を行う
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