研究代表者中川と研究分担者佐々木は平成16年8月31日-9月11日、研究協力者である于暁飛、李林静とともに、中国黒龍江省街津江に赴き、同地の少数民族であるホジェン族の民具名称等について現地調査を行った。また研究協力者の田口善久は平成16年8月31日-9月27日、中国貴州省に赴き、同地の少数民族であるミャオ族の民具名称等について現地調査を行った。ホジェン語はトゥングース語族の一言語であり、ホジェン人とアイヌ人は江戸期に清朝との朝貢交易の関係で直接接触を持っていたことが確認されている。今回の調査でホジェン語とアイヌ語の間に直接的な影響関係は認められなかったが、民具の形状・用途については密接な関係があることが認められ、食器類に関しては清朝時代に当時の官夷であったホジェン人から北方諸民族に伝播したものが、アイヌ、特に樺太アイヌにまで伝わったものである可能性が出てきた。また皮なめし具とその名称に関しては、その一部は遠くサハ共和国の少数民族であるユカギールにまで同形・同名のものが確認されているが、その発祥の地は清朝と一番関係の深いホジェンである可能性も高い。一方、中国南方の少数民族であるミャオ族の言語・文化は北方のホジェン族とは対極の位置にあるため、アイヌを含む北方諸民族の言語・文化との直接的な関わりは薄い。したがって、逆に北方的でない要素を検証するために重要な意味を持つ。北京を含む中国北方の漢文化はモンゴル・トゥングースの影響を強く受けているため、漢文化に由来しない北方的なものを抽出するためには、南方の諸民族との対比が重要になる。そのための基礎調査が今回の貴州省ミャオ族調査であるが、その結果については現在調査資料のデータベース化の作業を行っているところであり、次年度の課題となる。
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