研究課題
基盤研究(B)
本研究は樺太アイヌを中心に、民具名称と民具それ自体の分布関係を見ることによって、日本北方諸民族の言語接触の状況とその歴史を探ろうとしたものである。本研究で重点をおいたのは、言語接触の問題をただ言語データのみから見るのではなく、物質文化から見た歴史的関係と連関させて論じるということであった。そのために、言語だけでなく、民具そのものの形状・用途・製法などについても同時に調査を行い、言語面と物質面の相互関連を考察した。その成果として、まず基礎資料となる民具名称のデータベース作成を行った。比較の基点となるべき樺太アイヌ語についてはすでに現地調査が著しく困難な状況にあるので、田村・中川が文献に基づいてデータベース作成を行った(『成果報告書』2.1)。現地調査に基づくデータベースとしては、丹菊によるニヴフ語民具語彙(2.2)および長崎によるユカギール語民具語彙(2.3)を今回まとめることができた。それ以外の言語に関してはまだ収録語彙量が十分でなく、引き続き調査を行っていく予定であるが、なめし具や調理用具などのかぎられた分野についての物質面・文化面を含めた調査報告として、ホジェン語に関する李論文(3.3)、ミャオ語に関する田口論文(3.5)を掲げた。言語接触に関する問題としては、中川が3.1において、アイヌ語のpasuyという語をめぐる日本語、アイヌ語の北海道・樺太・千島方言、ニヴフ語、トゥングース諸語の相互関係について論考を行った。また、上記李論文を受けて、なめし具に関する言語的・物質的影響がポジェンを中心とする黒竜江沿岸民族から樺太まで及びながら、樺太アイヌを含めアイヌ語にはほとんど影響を与えていない事実とその理由について3.4で論じた。丹菊論文(3.2)では、2.2のデータベースに基づいて、ニヴフ語の民具名称についての網羅的な検討を行い、周辺諸言語との関係について詳細に分析を行った。
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