研究課題
本研究は、一般の視覚研究に用いられる環境とは異なり、広い空間的布置で刺激が呈示できる環境を構成すること、またその実験環境を用いて色検出系と輝度検出系の相互作用に関する3つの実験を行うことを目的としており、3年度にわたる研究の2年度目にあたる。我々は視覚系全体の時空間的な情報処理過程には、輝度検出機構だけでなく色検出機構の特性が重要な影響を及ぼすことを見いだしてきた。しかしこれらの実験に用いた刺激呈示システムには、色検出系の機能を検討する際に明確な限界があった。つまり広い(大きい)空間布置の刺激を呈示できないことである。色は大局的次元・低周波数域でより機能するようであり、この実験下での検討は人間の色覚モデルを考える上で重要である。この環境はまた他の心理学の実験環境にも援用可能である。初年度は実験環境の整備と実験1(空間的コントラスト感度曲線に及ぼす色システムの順応レベルの効果)を行い、実験1では従来の研究より明確な変化傾向を確認できた。2年度目に当たる今年度は実験2を行った。この実験では、様々な色及び輝度順応下での輝度システムと色システムの相互作用を検討するために、色と輝度の複合格子を用いて検出閾を測定した。最近の研究から閾値レベルでは輝度と色のコントラストは検出に際し、促進的に働くことが報告されている。しかしこれらの研究は輝度及び色の順応レベルを一定に保っており、様々な順応レベルでこの促進効果の程度を検討した実験データはまだない。この実験では刺激の平均輝度と平均色度(飽和度)を組織的に変化させ、様々な明順応と色順応の状態を設定した。そして検出のための変調も輝度次元、色次元および両者の複合次元を設定する。促進効果は、輝度システムと色システムの順応レベルによって変化し、各システムの順応レベルが低いとき、他システムへの影響が大きい。また相互作用は順応刺激とテスト刺激の方位と空間周波数が同様の場合のみに起こる。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (3件)
日本心理学会第68回大会発表論文集
ページ: 493
日本機械学会2004年度年次大会講演資料集 Vol.8
ページ: 229-230
The 28thInternational Congress of Psychology, Beijing, China
ページ: 2-3