研究概要 |
固形がんの進展、転移には血管新生が必須であるが、この腫瘍血管新生には、骨髄から誘導される血管内皮前駆細胞(EPC)が関与していることが示唆されている。そこで、がん患者および健常人の末梢血よりPBMC分画を分離、この中のEPCを抗原発現と形態の面から検討し、EPCの動態にがんがどのような影響を及ぼすかを考察した。 1.がん患者12名および健常人7名の末梢血中の、VEGF Receptor-2,AC133(CD133)の割合は共に極めて少なく(0.1%以下)で、担癌状態が末梢血のEPCの割合に変化を及ぼすことはなかった。 2.がん患者と健常人の末梢血からPBMCを分離、Fibronectinをコートしたdish上で15%FCS M199に2ng/ml VEGFを加えたmediumにて7-10日間培養、付着したコロニーの数とそのphenotypeを検討した。従来の報告では、EPCから分化した血管内皮を示すといわれたコロニー数は、がん患者で明らかに少なくなっており、この細胞の大部分はCD34(-),VE-cadherin(-),VEGF Receptor-2(-)で血管内皮の性質を保持していなかった。しかし、その培養上済中には、多量のVEGFが検出された。したがって、この細胞は、いわいるcirculating angiogenic cell(CAC)と考えられ、癌患者の血液中には、このCACはむしろ低下していることが判明した。 3.上記の培養細胞は、CD80,CD86を発現しており、CEAペプチドを添加したところ、自己リンパ球を活性化する能力があることが判明した。したがって、monocyteから誘導した血管内皮前駆細胞は、血管に分化するだけでなく、抗原提示能を有し、局所での免疫応答に関与している可能性が示唆された。
|