研究実績の概要 |
【背景】肺高血圧症はニース分類に従って5群に分類される。第1群の肺動脈性肺高血 圧症には、特発性加え膠原病、消化器疾患などに伴う病態が含まれる。またその他の 4群には左心疾患や肺疾患などに合併する病型が分類される。近年、肺高血圧症の背 景疾患別の発症機序の解明や肺高血圧症治療薬の有効性の検証が望まれている。肺では、FGFR1はII型肺胞上皮細胞、血管内皮細胞、肺胞マクロファージ、平滑筋細胞などに発現している.PAH患者肺ではFGFR1陽性の血管内皮細胞,平滑筋/筋線維芽細胞が正常肺より多いことが報告された。【本年度の目的】肺高血圧の血管リモデリングにPDGF, EGF, BMP, FGF, VEGF, TGF-betaなどの成長因子及びそのレセプター、サイトカインの関与検討する。【方法】肺高血圧患者及び非肺高血圧患者の肺組織を用いて免疫組織化学染色を施行し、その染色性により発現強度を半定量評価すると共にtype I, type III, typeIVコラーゲンの発現も同様に評価する。スコアは4段階に評価(0; 染色されない, 1; 25%以下の細胞に陽性、2; 25-75%の細胞に陽性、3; 75%以上の細胞に陽性)した。【結果】FGFRは正常肺において基底細胞、血管内皮細胞、肺胞上皮細胞に発現が認められた。肺静脈閉塞症においてはFGFRの発現は、細静脈内皮細胞において有意に増加しておりtypeIII及びIVコラーゲンの陽性像を認めたが、EGFRとVGER2の発現は認めなかった。【結論】肺高血圧の血管肥厚においてFGF-FGFRを介したシグナル伝達の亢進が示唆された。
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