本研究の目的は、直腸がん手術後に排便障害で悩んでいる患者に対する、術後の排便障害対策の包括的な看護介入プログラムを開発することである。申請者らは、これまでの研究で作成した排便状態を評価するアセスメントシートを改良し、自己効力感、GROWモデルを活用した術後排便障害介入プログラムを開発することである。 対象者は、研究協力の承諾が得られた外来通院中のI直腸低位前方切除術(LAR)と内肛門括約筋切除術(ISR)を受けた患者であった。初回介入時から排便状態が良好な状態、あるいは外来通院終了まで介入し、主観的QOL(SEIQoL-DW; 日本語版(暫定版)個人の生活の質評価法-直接的重み付け法)と自己効力感尺度を測定できた対象者は、LARが11名、ISRが13名、計24名であった。介入前の自己効力感の中央値は10点であり、SEIQoL-DWの平均は70.6であった。介入後の自己効力感の中央値は10点で、SEIQoL-Dwの平均は74.6であり、介入前に比べ上昇した。24名のうち、自己効力感が「低い傾向」であったのは4名(LAR=1、ISR=3)であり、GROWモデル(目標の達成に向けた4つの段階を示したモデル)、排便状態アセスメントシートを併用した介入を行ったところ、排便状態は改善傾向にあったが、自己効力感は「低い傾向」から「非常に低い」に低下した対象者が2名、変わらず「低い傾向」であった対象者が2名であった。主観的QOLのSEIQoL-DWは1名が低下したが、3名は上昇した。また、排便障害が高度であった対象者はISRが多かったが自己効力感は低くなかった。 自己効力感と主観的QOL(SEIQoL-DW)は必ずしも相関しておらず、排便状態が改善しても自己効力感が高いというわけではなかったことから、排便状態の改善とともに自信を持って生活できるような働きかけが必要であると考えられた。
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