研究課題
基盤研究(C)
研究期間に国連障害者の権利条約交渉は大きく進展した。平成16年度には、3回の特別委員会(第3回-第5回)、平成17年度には2回の特別委員会(第6回と第7回)が開催された。平成16年1月の作業部会でまとめられた作業部会草案に基づく交渉の成果は、平成17年10月に議長草案として実り、平成18年1月・2月に開催された第7回特別委員会では、その議長草案に修正が加えられたワーキングテキストがまとめられた。条約交渉は最終段階を迎えつつある。本研究の特色である障害学と国際人権法学両方からの分析が、障害者の権利条約の研究に欠かせないことが明らかになっている。障害学の(1)社会モデル(社会の障壁除去)、(2)文化モデル(障害者の生の承認)、(3)障害者自身の参画(「当事者」参画)、という主要な要素はこの条約に確実に反映されている。国際人権法学の観点からは、他の人権条約との比較対照の重要性も明らかである。とりわけ、女性差別撤廃条約と子どもの権利条約は本条約案の中でも、ジェンダー・女性と子どもが大きな論点となっていることからも、関連した考察が不可欠である。さらに、人権に関する国内・国際的システムの分析も並行して実施した。国際的人権条約の実施の要となる国内での実施体制に関する研究は欠かせない。本研究では、実際の交渉現場に立ち会うことで、ダイナミックな条約交渉、策定過程の報告・分析をほぼ同時進行の形で社会的な還元を行ってきたことも大きな成果である。国際人権法学会等の関連する学会等や、インターネットのウェブサイトでタイムリーに情報を提供してきた。今後も引き続き、大詰めを迎えた策定過程の分析を遅滞なく進めると共に、条約の採択に向かって、いっそう緻密な条約内容の分析そして、国内実施に向けての考察を進める必要がある。
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