大阪府の全公立小学校児童を対象とした自覚症状調査が、1973〜2003年まで2〜3年毎に15回実施されてきた。児童の「咳」有訴者率は、1983年以降約10%でほぼ横ばいに推移したが、夏期の平均気温と有意な負の相関関係を示し、気象条件の影響を受けることが示唆された。「咳」有訴者率は、横断的にはどの調査年度においても、「家の近くは昼も夜も自動車がたくさん通る」(以下「自動車が多い」)該当者率と有意な関連がみられた。また、大気中二酸化窒素(NO_2)濃度ともほとんどの調査年度で有意な相関を示した。「自動車が多い」該当者率は、NO_2濃度と強く相関し、さらに自動車交通量実測値とも有意に相関することから、自動車交通量や排ガス汚染の指標として利用可能であると考えられた。1995年頃から貨物車の交通量が減少し、同時期に「自動車が多い」該当者率と大阪府のNO_2濃度も減少傾向を呈した。大阪市を除くと、1993年または1997年から2003年までの「咳」有訴者率と「自動車が多い」該当者率の年次差間においても有意な相関がみられ、NO_2濃度の低下によって、「咳」有訴者率が低下することが示された。1993年または1997年から2003年への「咳」有訴者率と「自動車が多い」該当者率の推移の対比から、「自動車が多い」該当者率が20〜25%以下になると「咳」有訴者率への影響がみられなくなり、これをNO_2濃度に換算すると、小児の「咳」症状に影響を及ぼすNO_2濃度の下限値は、年平均値にして約0.022〜0.024ppmと試算された。
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