研究課題
防汚作用を有する臭素を含むトリテルペノイドであるチルシフェロールを生産するマギレソゾから得られたバナジウム依存型ブロモペルオキシダーゼの性状を調べた。比較的安定な組み換えタンパク質として得られるLsVBPO2を大量に調製することに成功した。有機合成によって調製したスクワレンエポキシドを用いて、組換え酵素による反応に供した。その結果、1H NMRを測定できる程度の産物が得られた。解析の結果、完全な構造決定には情報が不足していたものの、臭素を含むある種のトリテルペノイドに非常に近い構造であることが判明した。新規付着阻害物質を探索するため、紅藻のみならずラン藻も対象に広げてスクリーニングを実施した。その結果、サウジアラビアで採集したOkeania sp.にタテジマフジツボ幼生に対するきわめて強い付着阻害活性が見いだされた。活性物質の精製を試みたところ、付着阻害活性は示さないが塩素を有する環状化合物と、不活性かつハロゲンを含まないアシルアミド、および顕著に付着を阻害するドラスタチン16を単離した。ドラスタチン16の全合成にも成功し、合成品も付着阻害活性が高いことと細胞毒性を示さないことを確認した。また、マレーシアで採集したMoorea bouilloniiから上記アシルアミドに近い構造で塩素を有する化合物を単離した。平面構造を決定した後、立体配置を検討している。アミノ酸残基中の立体配置は常法により決定できたが、長鎖アシル基中の塩素が結合している不斉炭素の立体配置決定は現在検討中である。
2: おおむね順調に進展している
マギレソゾのバナジウム依存型ブロモペルオキシダーゼについては、これまでより大量の組換え酵素を使って反応を検討できるようになり、反応に用いる前駆体を有機合成で調製できており、大きく前進した。一方、次世代シークエンサー解析については、質の高いサンプルを準備できていないので、進捗していない。顕著な付着阻害活性を示すドラスタチン16の全合成に成功したことは大きな成果である。また、ラン藻も研究対象に加えることにより、興味深い塩素を有する化合物が得られて、今後の発展が期待できる。
ソゾのハロゲン化合物の生合成研究を推進すると共に、構造決定困難な塩素を直鎖に有する化合物の立体化学解明に挑戦する。進捗していない次世代シークエンサー解析に必要な上質のサンプルを得るため、ソゾの培養実験を進める。
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日本マリンエンジニアリング学会誌
巻: 52 ページ: 33-37
Org. Biomol. Chem.
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10.1039/c6ob02657e