生体高分子のX線結晶構造解析において結晶化はその後の構造解析の成否を決める極めて重要な工程である。本研究では、結晶化ドロップに直接微小X線を照射し回折像を得ることで、回折性を可視化する回折イメージング法を開発し、結晶化ドロップ中のタンパク質結晶の有無から結晶の数、結晶の質までの多岐にわたるスコアリングを客観的に、且つ全自動で行うことを目的としてきた。 本研究では期間全体を通して、回折像を如何に迅速にスコアリング・可視化を行うか、ということを重要視してソフトウェア開発に取り組んできた。その結果、研究期間中に別予算により導入されたEIGER X 16M検出器では約1800万画素の回折像を最大133Hzにて出力するが、そのような場合でも回折像取得から数秒後にはスコアリングが完了するようになった。このソフトウェアは本研究の回折イメージングのみならず、PFタンパク質結晶構造解析ビームラインで広く使用されている。一方で、最終年度まで課題として残っていた高速測定については、調査の結果駆動ステージのトルク不足で高精度な位置制御が困難であることが分かった。今後高速測定を実現させるためには、結晶化プレートのサポートの軽量化が必須であると考えられる。 結晶化ドロップの回折イメージングによるスコアリングと結晶化条件を結びつけ、その相関を解析することで、最適な結晶化条件を導き出すことも本研究の目的の一つであった。実際にスコアリング結果と結晶化条件の相関を調べたところ、現時点では明らかな相関を得ることは出来なかった。これは件数が少ないことが原因と考えられる。今後データを蓄積してさらなる解析を行う。
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