研究概要 |
キュウリモザイクウイルスのダイズ系統(CMV-Sj)をダイズに感染するウイルスベクターとして開発することに成功し、ダイズ遺伝子の機能解析に使用できることを実証した。現在でもダイズの形質転換は非常に難しく,品種も限られるため、CMVベクターを使用して短期間に遺伝子の機能を推定できる意義は大きい。このベクターはゲノム遺伝子のうちRNA3を交換することによって様々なダイズ品種に感染させることが可能である。本研究ではターゲット遺伝子としてアントシアニン・イソフラボンの生合成経路の遺伝子群のうち(1)種子の色を支配するChalcon synthase(CHS)遺伝子と(2)ケルセチンの合成に関与し,さやの毛の色を支配すると推定されているF3'H遺伝子の2つである.CMVベクターにCHS遺伝子の一部を挿入し、茶ダイズに感染させた結果、ダイズ種子の色は退色し黄色や様々なモザイ状に変化した。またF3'H遺伝子を挿入した場合には、ケルセチンの蓄積量を低下させることに成功した。ケルセチンはダイズの低温耐性にも関与していると考えられており、現在,遺伝子の機能と表現型発現との関連について解析中である。これらの結果は,CMVベクターを用いて機能不明なターゲット遺伝子をサイレンシングによって制御できることを意味し、ダイズの成分の改良などのためにダイズ遺伝子の機能解析を推進する新手法として期待できる。またダイズに限らず他のマメ科植物にも十分応用可能と考えられる。本研究の成果は4つの学術論文にまとめた。
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