研究概要 |
平成19年度では,胃癌,大腸癌あるいは食道癌手術症例で性差の重要な因子である性ホルモンの末梢血中17β-estradiol, testosterone, DHEA,サイトカインを経時的に測定した.男性が女性より術後の炎症性サイトカイン値が高値であり,重篤な術後合併症の頻度が高かった.術後のtestosterone/17β-estradiol比は,男性症例で合併症を併発する症例では術後低値を持続するのに対し,合併症を併発しない症例は有意に高値を示した.DHEAは術後の変動には差がなかった.さらに,手術侵襲で脂肪組織からアディポネクチン産生は低下,レプチン産生は亢進し,その産生能の変化にtestosterone/17β-estradiol比あるいはtestosterone値が関与していることが示された.末梢血アディポカイン値と性ホルモン値に有意な相関から,性ホルモンの影響下による脂肪細胞の働きが術後合併症の発生機序の一つである可能性が示唆された.この結果を,平成18年度の外科関連の学会に報告し,「Depressed adipocyte function is a risk factor for postoperative infection following colorectal cancer surgery」と「Gender-related difference in immune responses following major surgical trauma diminished by preoperative steroid administration」の2編の論文を投稿した.現在,査読中である.
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